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梅干と昆布。

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びんぞことびじん。に。

昼休みにちょこちょこ書いてます。
ゆる~い気持ちで書いてるので(だからここに載っけている)
さらさらと進みます。

キャラづけも出来てないけど(汗)

おひまつぶしにでも。


翌朝、遥希がテーブルでパンを齧っていると、玄関のインターホンが鳴った。
「ハルちゃん、お友達がお迎えにいらしてるわよ」
母親がニコニコ顔で告げる。
「は~い」
間延びした返事は人を待たせているという感じではない。
(おいおい早いっつうの!)
迎えに来いとは言ったのは自分のくせに、遥希には急ごうという気は全くなかった。
「お友達お待たせしちゃ悪いわよ?」
「わかってるって」
そわそわし始めた母親をいなして、遥希はいつも通り食事を済ませると最後にコーヒーをコクリと飲んだ。
食器をシンクに片して上着を羽織りながら洗面所に向かう。
(よし。今日もいい感じ)
鏡で最終チェックをするのは毎日のことだ。
恐ろしく整った面立ちは少し怜悧に見えなくもないが、それがまた遥希の美貌を際立たせている。
可愛らしいとか、柔らかいとか、言われたことはほとんどないが遥希にはなんの不満もないし、主に女性に対して使われる『美人』だといわれても不快ではない。
際立った容姿には自信も自覚もあるし、今更のことなのである。
「ハルちゃん、今日も美人さんよぉ~」
他人が聞けば究極の親バカと呆れられそうな母親の言葉も当たり前に受け取る。
その母親自身もかなりの美貌の持ち主だ。
母親の遺伝子を色濃く受け継いだ格好だが、性格は全く違う。
天然でおっとりしている母親は抜けた部分もあり可愛らしい性格をしている。
逆に遥希はかなり冷めており感情が表に表れないし、感情の揺れもない。
「じゃあ、行ってきます」
遥希が玄関を出たころにはたっぷり30分は経過していた。
「お、おはよう・・・」
門の外で直立不動で立っている男は朝っぱらからもっさりしている。
「・・・はよ」
待たせたことを謝る気は遥希にはこれっぽっちもない。
男はもちろん怒ったりはしない。
さっさと歩き出す遥希の後を大男がちょこちょこついていく様が滑稽なのか、すれ違う人々の視線がふたりを掠めてゆく。
「荷物、持とうか?」
徒歩5分の駅に着いたところで男が突然話しかけてきた。
「じゃお願い」
教科書をロッカーに置きっぱなしにしているカバンは軽いくせに、遥希は躊躇いなく男に押し付けた。
逆に男のカバンはパンパンに膨れている。
それでも何も言わずふたつのカバンを肩にかけて歩きだした。
「加藤クン、おはよ」
ホームで声をかけられると、遥希は面倒くさそうに返すけれども、そんな態度にも誰も腹を立てたりはしない。
「今日も綺麗だね~」
「あのクールさが素敵ぃ」
囃し立てる声にも動じず、当たり前のことのように聞き流す。
滑り込んできた電車はすでに満員だった。
降車する客に続いて遥希は車両に乗り込むとサッとスペースを見つけてそこに収まる。
身軽だとこんなに乗車が楽なのだとある種感動しつつ扉付近を見やると、カバンを二つ肩にかけた男が乗車に苦労していた。
(あいつどんくさすぎ)
「オマエ後の電車にしろよ。カバンは教室に届けてくれよな」
声が届いたかどうか知らないが、プシューとドアが閉まり、男はホームに取り残されていた。
遥希はひらひらと男に向かって手を振った。

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